誰かが俺の部屋に居る

 誰かが俺の部屋に居る。それは間違いない。以前からも感じている。その事を思うと急にこの部屋に居る事が怖くなって俺は身支度を急いだ。本当の事を言うと俺の脳細胞が、この部屋に居る事を嫌がったのだ。そして部屋を出る時に、奥の部屋のカーテンが揺れている事に俺は気が付いた。不動産広告のチラシも妙に気になっている。

――『漂流』――

「いやよ、返してよ、元の様にして」耳を澄まして聞くと女性の甘えるような声では無く、すがるような声だ。何の為に。答えは知っている。見える光景は荒れ狂う海と島の絶壁だ。連なる絶壁の岩肌が月の光に照らされて、正体を漆黒の闇へと隠すように鈍く、光り、輝く。まるでその岩肌が 自分に向かって、近寄るな。と言っている様な気がする。海の波は眩しいほどの月明かりで、白波が立っている事が確認できる。

 その白波がこの世の正義を全て飲み込んでしまうかのように荒れ狂う。足元の砂は、大きな波が押し寄せ沖合に流されていく。いや違う。自分を砂に引きずり込むために、その波はある。いやそれも違う。波が自分の存在を海の底に引きずり込もうとしていた。

 そしてその女性の声に混じって、確かに聞こえる男の歌声。何と歌うのか、はっきりとは聞こえない。ただ、その声が辺りに低く響く。誰が歌うのか知っている。大下だ。彼の歌声が、何処から流れてくるのかは分からなかった……何時の間にか自分はに続く。

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